カテゴリ:舞台( 57 )

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昨年暮れ、座・高円寺でちきゅうばこを見ました。YouTubeで「0才から楽しめる」という宣伝を見て興味がわきました。たいていの舞台は未就学児入場不可だし、親子そろって出かけられるイベントといえばNHK教育・おかあさんといっしょの公開収録とか、子ども目線に合わせたものがふつう。ところがこちらの舞台は、むしろ大人にウケてるシーンがあったりして、全然子どもに媚びてない!
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いぬ君の宝物・ちきゅうばこを、友達のカエルちゃんがこっそり持って逃げちゃう。ちきゅうばこには不思議な力があって、行くさきざきでヘンテコなことが起こる! みたいなあらすじでした。

ダンスと歌とお芝居が6:1:3ぐらいの割合で、台詞は少なめ。お話は全体で一つにつながっているけれど、10分前後でキャストと小道具が入れ替わり、そのたびごとに見せ場があります。たとえ集中力が途切れても、パッと別のシーンに切り替われば、そこから気持ちも新たに楽しめます。お話についていけなくなって持て余す、ということがありません。テンポの良さとめまぐるしい変化は、サーカスに似ている気がしました。
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舞台が面白かったうえ、私はいっしょに見に行ったメンバーが最高でした。連れはママ3人+0~4才の子ども4人。私は子どもがいないので、子連れの外出がどんなに重労働かピンと来ないんですが、高円寺駅で待ち合わせをした段階で、人ゴトではなくなりました。子どもは一人でも遊ぶ、同じ年頃の子どもといれば倍の勢いで遊ぶ。開演前からこのテンションの高さで、落ち着いて観劇ができるのだろうか……。

そんな心配はまったくの杞憂で、3才児・0才児+ママに挟まれての観劇は特等席でした。舞台上のユニークなパフォーマンスと同時に、ベビー&キッズの反応も視界に入ってくるわけです。3才の男の子は初対面だったけど人懐こくて、シーンの合間に「おもしろいねっ! ねっ!」と相槌を求めてくるし、0才児だってツボにはまってパッと身を乗り出す瞬間があるし。おかげで子どもの目でものを見る、という体験ができました。身内の子どもじゃなくても、たぶん子どもが隣に座って観劇するっていうのはエキサイティングなことだと思います。

客席は半分ぐらいが子どもですが、終演までほかのお客さんの迷惑になるような子はいませんでした。まあ、一人だけ暗闇がダメな子がいて、暗転するたびに「こわいーーー!」、明転しても恐怖がおさまらずソワソワして声を出しちゃったり……というのはありました。まあ慣れない場所じゃしょうがないよね、と思える範囲。どうしても子どもが落ち着かない場合は、親御さんがタイミングをみはからって中座する、ロビーにも大型モニターで上演中のライブ映像が見られるので、そちらを鑑賞する、といった判断をしてもいいかなと思いました。パニクってる子どもは自分から席を立てないんだし、スタッフが席にいるお客さんを外に連れ出すわけにはいかないもんね。


出演 上ノ空はなび/野崎夏世/松元治子/丸本祐二郎/鈴木琢磨(toRmansion), 松居大悟/目次立樹(ゴジゲン), 音室亜三弓/石橋和也(ハレのヒ) 他
脚本 石原美か子
演出 上ノ空はなび
大人 S席3000円 A席2500円
学生(高校生以上)S席2500円 A席2000円
こども(4歳以上) 1500円
4歳未満 お膝の上無料 但し、座席が必要な場合は有料(1500円)
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by toyorubichun | 2010-01-24 19:08 | 舞台
池袋演芸場で初めて寄席を見てから、寄席というものをよそで見ていません。上野の鈴本演芸場、浅草演芸ホール、新宿末廣亭……きっとそれぞれに雰囲気がちがうんだろうな、いろいろな場所で味わってみたいなと思いつつ、池袋にだけ足しげく――いえ、ついでのあるときフラリと何度か入ったことがあります。

そんなこんなで、“四代目江戸家猫八”と聞いてパッと「あの人がついに!」と思うほど寄席にくわしいわけではなくて。年配の芸人さんともっと若めの芸人さんが、指をくわえて器用に鳥の声をマネしているのを、テレビで見たことはありました。猫八さんよりも“江戸家小猫”さんのほうが、なんか可愛らしい名前のおじさんだなあ、と思ってよく覚えていました。彼らが実の親子で、動物ものまねが明治時代からつづく伝統芸だというのは、テレビにちょいちょい登場するときに、刷り込みのようにインプットされた情報でした。

わたしは寄席ビギナーのくせに、知ってる人を狙いすまして見に行ったことがありません。いつ入っても、面白いからです。池袋演芸場で、名前と顔の一致する芸人さんの舞台を見るのは初めてだなあ、それも本日千秋楽とは! たまたま池袋に来てラッキー! そんなふうに浮かれてワクワクしながら入りました。

動物ものまね。自分が知らないだけで、猫八さんはほかにいろんな芸をするのかな……? と思いましたが、受付でもらった番組には「ものまね 小猫改メ江戸家猫八」とある。やることはものまね一本、で間違いないらしい。ものまねを一人で30分? ううむ、長い持ち時間をどうやるんだろう……。次々に現れる芸人さんを楽しみながら、猫八さんの登場を待ちました。橘家円蔵さん、三遊亭円歌さん(師匠って呼ぶのが正しいのかもしれませんが、使い慣れていない自分が使うのは失礼な気がするのでさん付けで通す)が愛らしくてたまりませんでした。「きょうは猫八の襲名披露記念公演にお越しくださってありがとうございます」、そのおっしゃりようが、猫八さんを我が子のようにかわいがってきた時間をいとおしむようで、温かでした。

さて猫八さんの出番。ああ~、テレビで見たことあるお顔! もうすぐ還暦に見えな~い! レパートリーは200種類を超える(生活ほっとモーニングのWeb参照)猫八さん、ですがどんどこモノマネを繰り出していくわけではありません。むしろ芸はほんの一瞬。その、磨きに磨いたモノマネを発するまでの焦らされる時間が、なんとも幸せでした。ずっと見ていたいのは、芸そのものだけじゃない。江戸家猫八という人間の作る、あの幸せな空気を、ずっと吸っていたくなるのです。

小猫と名乗るようになったのは9歳。「おとうさんのお仕事を見ておきなさい」と母に連れられて、舞台袖から初めて先代のコケコッコー! を見たときのショック。「あんたも大きくなったらやるのよ」と言われて、ちょっと「どうしよう」と思ったこと。いつまでも、もっともっと聞いていたい優しい声でした。にこやかに、しかし淡々と思い出話が語られました。いざ芸を披露するときにはもちろん、いよいよだなっ、と客席の緊張がみなぎります。「あ、そこまで力入れて聞かなくて大丈夫ですよ?」そう和ませてくれてから、スッと芸に入る。その切り替えが、ほんとうに素敵でした。満席の会場に遅れてやってきた立ち見客には、舞台上からサクッと「あっち空いてますよ」とご案内。ライブだなあ。

有名なウグイスをはじめ、鳥マネに使う指笛は、口笛の10倍大きな音が出ます。周波数が自然界のそれと一緒なんでしょうね、ピチュピチュという小鳥のさえずりすら、耳にキーンと響きました。また、犬や猫の声帯模写は、人間のどんな歌の発声とも違うそうです。聞こえたままを再現する、それは画家にとってのデッサンと同じです。頭でイメージしてても始まらない。動物にはりついて、鳴く様子を見て、実際に横で鳴いてみる。父から教えられたことはもちろん、いまの芸があるのは、自然観察をつづけて得たものです、とおっしゃってました。ふつうのニワトリと比内鶏、オオハクチョウとコハクチョウ、カルガモとマガモ……ミクロの違いを、なんとなくのさじ加減でなく、こう違う! と掴むまで研究する。そして必死に会得する。できるようになったらハイ完成、じゃないのが芸なんでしょうね。見せ方に心を砕き、笑いと感動のブレンドされた空気をつくりあげて、やっと作品になる。ともあれおおもとは、ひたすら自然と向き合って、体で覚えてアウトプットすること。クリムトの美しい習作がアトリエに散乱していたように、猫八の美声は山野にこだましているのだな、と思いました。


それにしても昼夜あわせて2,500円て。昼12:30~16:00、夜17:00~20:30、合計7時間ですよ。寄席のチケットってほんとに安い。


池袋演芸場番組 平成21年11月20日(金)昼の部 12:30~16:30

落語 柳家喬四郎
漫才 ホームラン

落語 橘家蔵之助
落語 三遊亭踊る多
奇術 アサダ二世
落語 柳家はん治

落語 鈴々舎馬風
俗曲 柳家小菊
落語 春風亭一朝

お仲入り

落語 柳家〆治
落語 橘家円蔵
落語 三遊亭円歌
太神楽 鏡味三郎社中

ものまね 小猫改メ 江戸家猫八
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by toyorubichun | 2009-11-21 20:19 | 舞台
『夢のかけら』三笑亭夢丸 新江戸噺with東京奏楽舎

2009年5月20日 19時開演 深川江戸資料館・小劇場
前売¥2,500 当日¥2,800

第一部《落語》親子酒
第二部《クラシック・コンサート》夢にまつわる物語
第三部《新江戸噺と音楽のコラボレーション》夢のかけら

落語:三笑亭夢丸
作曲・編曲:内田英介
音楽:東京奏楽舎(オーボエ 桃原健一/チェロ 大島純/ピアノ 菅野恵子)

幕間に10分休憩をはさむ3部構成。のんべえを笑う落語にはじまり、愛と夢にちなんだ名曲が流れ、しあげは下級遊女がヒロインの人情噺。……なんか大人エッセンスむんむんの、ついでに加齢臭も漂ってきそうなラインナップですが、品がよくてカラッとした笑いをたのしんだ2時間でした。お金のことを言うのは口幅ったいけれど、この質とボリュームで前売¥2,500は安いと思いました。舞台のチケット代が安いと思うことなんて、正直めったにありません。未見の方にはぜひ、将来チケットが高騰する前に(!?)見ておいて! と忠告したいところです。



【 第一部《落語》親子酒 】

第一部は夢丸師匠の落語です。

はじめとおわりに音楽家たちが、高座の傍らで出囃子を奏でます。洋と和のクラシカルなものが一つの舞台にどんと載ってるわけですが、和洋折衷とはちょっと違う気がしました。夢丸師匠が「ようこそおいでくださいました」と満面の笑みでお客をもてなす横で、シックなドレスと燕尾服に身を包んだ音楽家は、カタい表情で演奏に没頭している。

このパッと見なんとも統一性のないかんじが、これからはじまる舞台の特徴を予感させました。まるで落語とクラシック音楽、どちらかが主役でいっぽうは添えものという区別はないんだよ、と宣言されたかのよう。出囃子は落語のオープニングではあるけれど、「生演奏の豪華なBGM」というだけなら、舞台袖に隠れて音を出してもいいわけです。それに脇役が、こんながっつり盛装して登場するのはどうかと思う。

いいとこ取りで、二つのよさの真ん中らへんをやりましょう、みたいな薄まり方はさせないつもりなのだろう。それぞれが、すでに培ってきたスタイルを微塵も崩さず屹立することによって、お互いの魅力をしぜんと際立たせる。第三部のコラボレーションで夢丸師匠と東京奏楽舎が見せてくれるのは、そんな世界なのかしら、と胸が高鳴りました。はたして、そのとおりでした。



【 第二部《クラシック・コンサート》夢にまつわる物語 】

第二部は東京奏楽舎のコンサート。ここだけ、司会がつきました。東京奏楽舎が夢丸師匠とおこなった公演の説明をまじえるなど、3人の演奏にはじめて触れる人へやさしいサービス。司会者はキャバレーの支配人みたいなヒゲづらのおじさんで、あやしい風貌に似合わぬ美声です。意表をついてテノール独唱でもはじまるのかとちょっと期待しましたが、最後まで司会をまっとうしていました。おおむね淀みなく曲の由来なんかを語るのですが、長いドイツ語のタイトルとかが読めてない、しどろもどろな一瞬も魅力。みのもんた、きみまろのような立て板に水の名調子とはべつの味わいです。

男女の愛をテーマにピックアップされた《コンサート・夢にまつわる物語》は、必ず一度は耳にしたことのあるおなじみのメロディを含む5曲で構成されていました。曲名は舞台上手の「めくり」に書かれていて、演奏前にエピソードが語られます。クラシックに疎い私のような人間でも、司会のおじさんが噛み砕いて教えてくれたので、わかりやすかったです!

音楽は希望あふれる若い恋のイメージから、愛は夢だったのかも? といった寂しさを募らせる調べへと変わり、ラスト1曲の重々しく尾を引くチェロの音には、ずーーーんと沈んだ気持ちになりました。なにこれ、さわやかな初夏の夜に嫌がらせ??? そんな苦々しさも軽妙なトークによって、哀しくて可笑しい人間模様に見えてくるのでした。司会のおじさんは毎回レギュラーなんでしょうか。ぜひ次回の公演でもお願いします、おじさんに会いたいです。




【 第三部《新江戸噺と音楽のコラボレーション》夢のかけら 】

上演時間20分。落語オペラとでも呼びたいような、秀逸なコラボレーションを束ねた作曲家・内田英介さんに伺いました。どうやって作曲したんですか?


「まず曲を作る時点で、師匠の噺のレコーディングを聴いて、ストップウォッチ片手に『噺のここからここまでに音楽をかぶせたい。ここで一度盛り上がって、ここは淡々とした感じ』と切って、そのとおりに曲を書きます。ブレの非常に少ない、精度の高い話し方をする夢丸師匠だからこそ出来る手法ですね」


舞台上で演技にともなう音は、BGMであれツケ打ち(歌舞伎で見得を切るときなどの効果音)であれ、タイミングが命といえます。けれども、夢丸師匠と東京奏楽舎が共有する音は、あるタイミングで一体化するのではありません。よーいドンではじまってから、幕が降りるまで二つで一つ。とうとうと流れる落語の台詞回しが、いつのまにか聴こえてきた音楽とぴたりと同調するシンクロっぷりには脱帽。そう、まるでディズニーアニメのミュージカル場面をライブで見てるみたいな、奇跡のシンクロが随所にあるんです!

それにしてもストップウォッチで測って作られた曲、なんて言われると、絶対ミスは許されないんじゃないかと恐ろしくなってしまいますが、公演で聴いた夢丸師匠の語り口も楽器の響きも、いたってのびやかでした。緻密、それでいて懐の深いグルーヴ感。あのゆとりはどうして生まれるんでしょう?

「実際高座に上がると当然テンポ感が少しずつ違う。そうなると客席で聴いている作曲家には、当然なす術が無いですよね。でも、それに対応して音楽のテンポ感もリアルタイムで変わってくるんですよ。曲の途中で、遅れたり早かったりしてるのを修正している。舞台に上がっている皆さんの呼吸が一致して、ここぞというポイントに、音がピターッ!と来ると客席で鳥肌が立ちますよ(笑)」

なるほど、このメンバーだからできる、難易度の高いコラボ。
心地よさの理由は呼吸にあるんですね。


しだれ柳がそよぐ川べり、たちこめる霧、夜道をそぞろ歩くとき……音楽の活躍にハッとするのは、おもに情景描写です。ここで聴こえてくるのは、たとえば戸を叩く「トントン」といった即物的な効果音ではなく、擬態としての音楽。風情ある江戸の音が、オーボエ・チェロ・ピアノのやわらかな音で表現されます。また、その音によって夢丸師匠のしぐさがよりドラマチックに見えてきます。つ、と片手を伸ばしたり、左右へゆらいだり、肩をすぼめたり。高座から一歩も動かない、きわめてストイックな動作なのだけれど、それだけで複数の人物を演じ分け、いる場所や時間帯まで伝わってくる。落語が想像力をかきたてるのは発する言葉だけでなく、多彩かつ的確な身体表現を用いるからなのだ、と気づきます。

江戸時代から脈々と受け継がれ、落語のみの「ストレートプレイ」で親しまれてきた古典作品だと、音楽とのコラボに違和感をおぼえる人はいるかもしれません。けれども、夢丸師匠の新江戸噺は先入感を持たれていない、まっさらなテキスト。『夢のかけら』は、夢丸師匠が2001年度より古典題材の作品公募をおこない、優秀と認めた台本のひとつであり、そこに譜面というもうひとつの台本が加わった作品でした。なるほど、独特の世界ができあがらないわけがない。えっらいアヴァンギャルドなことをやってるのに、なんの抵抗もなく親しみやすい。不思議です。

話芸一本ですべてを表現する落語に、音楽をつける必要はないんじゃないか、過剰になってうるさくなるんじゃないか、台詞が聞き取りにくいんじゃないか……。そんな心配をよそに落語は今、アカペラ、二胡、津軽三味線、ジャズ、演劇、ダンス、アニメ、などなどバリエーション豊かなコラボレーションに取り組んでいます。単なる賑やかしでは終わらない、新しい表現形態の萌芽。『夢のかけら』は、まさにそんなイベントでした。目撃できてうれしく思います。
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by toyorubichun | 2009-06-05 00:44 | 舞台
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2007年初演のミュージカル。わたしは今回お初でした。
銀座の夜空をあおげば、ひと足早い葉桜が。

『シャボン玉ホリデー』『ザ・ヒットパレード』『8時だョ! 全員集合』など昭和のテレビ番組を開拓してきた渡辺プロダクション。創立者ご夫婦の馴れ初めから現在までを、ヒット曲にのせて一挙にたどる作品です。

開場してからずっと、おなじみの懐メロが流れていました。開演直前は席に迷っているお客さんへ「大丈夫、僕たちがついています」と優しくアナウンスされたりして、幕が上がる前から客席は和んでいました。いざスタートしてからはもう、リズムに乗って左右にゆさゆさ揺れておりました。往年の歌謡曲がジャズ風味の粋なアレンジになっていて、ほんとうなら腰ごと動きたい衝動に駆られましたが、さすがにまわりに迷惑なのでヨコ揺れ。それも迷惑だけど。じっとしていられなくなる音楽って、いいなあ。

いろんな曲が寄せては返す波のように、ハモったりシフトしたりする構成がカッコいいです。メドレーというより、リミックスと呼びたいつくり。それはターンテーブルやサンプラーで既存の音をこちょこちょ混ぜてできあがり(そんな安易なモノじゃないだろうけどイメージ的に)、というわけにはいかない。楽器も歌も、そしてダンスも一発勝負のライブリミックス。すごい。てなことに気が付いて感心しているのは感想を書こうと思ってからで、見ている最中はまるで走馬灯だ~☆ とひたすら喜んでいたのでした。


第1幕のファッションがぜんぶ可愛い~♪♪ターンするとぶわっと広がるスカート、ポップな色使いのニット、女性らしいラインを引き立てる長いタイトスカート、……と、おもに女性の服に釘付けでしたが、RAG FAIRの着せ替え人形みたいに変わる衣裳も目が離せない。コーラス、アカペラを担当しながら、ちょいちょい登場する実在の人物やエキストラ役をめまぐるしく演じていました。幕間の休憩中、「さっきRAG FAIRが着てた服は、×××っていうメンバーが実際着てたデザインと一緒だった。懐かしいなあ」と目を細めるオジサマのおしゃべりに聞き耳を立てました。タイガースかな? ぼんぼりズボンに白タイツの王子様とか、パーティーグッズ売り場の商品をいいめの生地で仕立てたような、びっくりなコスチュームでした。

RAG FAIRは一人一人の名前と顔を知らなかったのですが、どのシーンでも最高のスマイルを見せていた、肩幅が広いほうのメガネは、たぶんリーダーの引地洋輔さんだと思います。歌えて演技もソツなくできるようなミュージカル俳優だったら、あんな新鮮なオーラは発光しない気がします。芝居にスレてなくて歌は一級品てところが、この舞台で重要なポジションを占めた勝因だったのでは。

クレージーキャッツ、キャンディーズ、沢田研二、ドリフの後輩が、フォーリンラブ、クールポコ、ザブングル、我が家、超新塾なんだなあ。通称ナベプロといえば、お笑い芸人さんの事務所だとばかり思っていました。懐メロ特集で耳にするミュージシャンのほとんどが、ナベプロだったんだ! チラシ束に「WE NEWSPAPER」という会報が折り込んであって、現所属の俳優・ミュージシャン・芸人・アイドルの活動予定が載っていました。パンフレットにある、ナベプロの歩みと社会の出来事をまとめた年譜(昭和30年代・1956年~平成21年)を見ると、昭和52年生まれの自分はザ・タイガースとかキャディーズにぎりぎり間に合ってる世代だったんだなあ、ピンクレディー(すみません、これは他社)の振付まねして踊ってたもんな、と歴史を感じます。

その昔、自分が10代の頃。昭和40年代、50年代の歌謡曲がとても古い音楽のように感じていたのはなぜだろう。自分が流行の音楽を意識して聴き始めた頃は、アイドルであれバンドであれ、ピコピコした機械音のまざった曲の多い1980年代。生音のオケはNHKのど自慢か紅白歌合戦のイメージが強くて、なんか時代遅れな印象があったのかもしれない。あと、やたら明るくて笑顔でうますぎるのが嘘っぽくて恥ずかしかった。前向きで健康的な歌謡曲を受け入れられなかったのは、なぜだろう。素直にいい歌だなあと思えるようになったのは、自分が年をとったせいなんだろうか。今じゃ生音にまさるモノなしと思っているのだから、人間の感覚って変わるものだなあ。

音楽は、指揮&ピアノのアキラさんはじめ、ベース、ドラム、ギター、トランペット、トロンボーン、サックス、パーカッションの10人編成バンドの生演奏でした。終演後も2曲、生演奏を聴かせてくれました。さっさと席を立つなんてできませんでした。贅沢!

劇中に歌われたザ・ピーナッツの「ふりむかないで」「恋のバカンス」を作曲した宮川泰さんは、アキラさんのお父さんだったんですね。小学生の頃、金管バンドで合奏した「宇宙戦艦ヤマト」の作曲家とだけしか知りませんでした。父子2代で素晴らしい音楽を作っているんだなあ。単に時代を反映したヒット曲というだけでなく、後世の人間にとっても心躍る音楽を生み出してきた、というところが渡辺プロダクションの歴史と共通していて、胸にじーんときます。


MUSICAL『ザ・ヒットパレード~ショウと私を愛した夫~』
ル・テアトル銀座 2009/3/5木~25水
シアターBRAVA! 2009/4/1水~5日
脚本:鈴木聡、演出:山田和也、音楽:宮川彬良
出演◆原田泰造、戸田恵子、瀬戸カトリーヌ、池田有希子、北村岳子、杉崎真宏、三上真史(D-BOYS)、升毅、RAG FAIR
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by toyorubichun | 2009-03-30 22:10 | 舞台
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藤代聖徳の定演は、身内が現役高校生として出演していた頃、行っていました。彼女が卒業生バンドに出演するというので、15年ぶりに足を運びました。吹奏楽部が催す年1回の定演は、このたび20回を迎えたそうです。おめでとうございます。

身内がいなくても入場できるんだろうか? などという心配は無用で、一般客も楽しみにしているイベントだそうです。今回も1Fは満席、2Fの空席を探してすわりました。2度の休憩をはさんで3時間の長丁場! 入場無料なのが申し訳ない、りっぱな演奏会でした。毎年来ればよかったな。

ブラスバンドって迫力があって気持ちいいです。弦楽器の繊細な調べも素敵だけれど、ピアニシモの表現が物理的に難しい(管楽器はどうしても音が大きく出ちゃう)ために、音の大小を情感にうったえるところも魅力だったりします。悲しみも喜びも高らかに朗々と奏でるブラバン、しかも若さあふれる女子高生の音ともなれば元気いっぱい。前日のリハーサルは夜22時まで続いたと聞きます。コンクールや学祭、そして定演に向けて練習して、いま思いっきり演奏してるんだなあと思うと、すがすがしい。

すべて部員の手作り、という衣裳もキュートでした。パートごとに色とデザインがちがうカラフルなバンドもおもしろい♪

ディズニーメドレーは奏者がミニーちゃんの耳をつけるだけでなく、キャラクターの衣裳を着た女の子たちが曲に合わせて、入れ替わり立ち代り登場しました。サテン地のひらひらしたドレスは、この一瞬のためにわざわざ用意したの!? と驚く数ありました。おなじみとは言っても、やはりディズニー通でないとパッとわからないメロディもある。そこへキャラクターが現れてくれると「ああ、あの作品!」とわかって親しみが涌きます。演奏と比べたら、いくらか軽いノリのコスプレ&振付も、ドタバタ喜劇を見るようで楽しい。ここまで豪勢な音で凝縮されたディズニーメドレーってすごいです。

わたしの近くにいた小学2年生ぐらいの女の子は、客席で「ベルだー! 白雪姫だー! アラジンー!」と呼んで大はしゃぎでした。お母さんが「しっ」と周囲を気遣って鎮めようとしていましたが、たぶんこの演目には一番正しい反応だった気がします。『美女と野獣』の舞踏シーンでは、独唱で美声を披露した小塚先生が“野獣役”。もじゃもじゃの毛皮をかぶるとか一切なし、びしっとタキシードを着た素の状態で出てきて“美女”と踊ってました。あのボリューム感、野獣並みの包容力を感じます。

OGバンドは卒業したてのOGから子育てに奮闘中のママまで、幅広い世代の卒業生70名が結集。指揮の井後先生の「ウン十年ぶりに楽器を手にした者もおりますので、どうぞご勘弁を。もう開き直ってやるしかありません!」とフォローとも謙遜ともつかないトークで始まりましたが、なんのなんの。足りないパートは在学生がヘルプに入ったそうですが、ブランク関係なくいきなり大舞台で堂々と吹けちゃう肝っ玉って、在学中の厳しい練習に耐えて培われたんだろうな。

初期の定演で、卒業生にとって思い出の曲だった『歌の贈り物』が流れるあいだ、現部長さんよりお礼が述べられました。「いまの私たちがあるのは、先輩方のおかげです」という謙虚であたたかい言葉でした。演奏してるOGたちは内容を知らされておらず、何を話していたのか気になったようですが、こんな可愛い後輩に囲まれて、おねえさん方うらやましいですよ。




余談。後日、運転中にラジオからマリア・カラスの歌う「トスカ」が流れてきました。聖徳吹奏楽部がトスカメドレーでコンクールに挑んでいた時期、うちでこれでもか! と聞かされていたので、たぶん一生忘れない曲です。耳にタコができるほど聞いたのに、いつ聞いても涙腺がゆるむ。歌に生き、愛に生き、激しい歌唱を繰り広げるカラスですが、ここはむしろ録音の都合上ちいさめに抑えられている、管楽器の響きのほうが泣いちゃうけどな……と思ってしまうわたしは、聖徳吹奏楽部に毒されたのでしょうか。



聖徳中高吹奏楽部第20回定期演奏会
2009年3月22日(日)14時開演
牛久市中央生涯学習センター文化ホール
入場無料

♪プログラム♪

【第1部】ハイデックスブルク万歳
     弦楽のためのアダージョ
     ヴァルドレス行進曲
     《合唱》春に
     フニクリ・フニクラ

【第2部】ブラボー・ブラス
     《合唱》手紙,およげ!たいやきくんin swing
     《フルート四重奏》アダージョとスケルツォ
     ディズニー・メドレー2009
     《金管八重奏》きらきら星変奏曲
     聖徳ヒット・パレード

【第3部】バンドのための民話
     アルメニアン・ダンス・パート1
     歌の贈りもの

     アンコール 坂本九メモリアル
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by toyorubichun | 2009-03-29 18:19 | 舞台
ウラスジ最高ー!
やっぱナマだよね☆

迷惑メールの件名みたいな書き出しで恐縮ですが、URASUJI感想文です。

シリーズ3回目の好色必殺時代劇。
2005年からスタートしたURASUJI、わたしは今回お初にお目にかかりました。
晴らせぬ恨みを晴らす、闇の稼業。言わずと知れた必殺仕事人がべースです。
『寵愛』は、文明開化に沸く明治・日本と、清王朝末期の中国を行き来する
愛と正義の大河ロマン。それぞれの分野で名を馳せる異色キャストが結集
した、歌あり殺陣ありの本格的なミュージカル!

杏姐さん(杏子)、おゆき(池田有希子)、カンヂ(岩崎大)、ヤス(森貞文則)
VS
西太后(深沢敦)⇒しなを作るとめちゃくちゃ可愛いマーベラスな悪女
紅(藤田記子)⇒「マイルーラー!!」といい声で叫びながらウインドミルする九の一忍者。

カンヂが惚れたチャイナ娘(倉科カナ)は、清の皇帝の寵愛を受ける絶世の美女だった。
その姉(明星真由美)は、帝をお守りする女戦士。西太后の非道な粛清によって
腐敗した政界の裏では、帝位を狙う袁世凱(河野洋一郎)の影も忍び寄っていた。



……ここはスズナリ、収容人数200ギリ。


いくらなんでも狭いでしょう。
話のスケール大きすぎでしょう。
ここで暴れたらぶつかって危険でしょう。

わかりきってる問題はかるーくクリア。すごい、の一語に尽きます。
この顔ぶれと動きの激しさにふさわしい劇場は、
赤坂ACTシアターや天王洲銀河劇場かもしれない。でもそれじゃーダメだ。
この至近距離でひえーケガしないかな、などとヒヤヒヤしながら見るのがいい。
オペラグラスなんてしゃらくさい道具を使わず、肉眼で凝視するのがいい。
小劇場の歌って踊るハイテンションな演劇は、そりゃあ好きです。
でも、ここまでものすごい人たちに小劇場でやられると、ほとんど毒気にあたったかんじ!


80年代、バービーボーイズをカセットテープで聞いて過ごし、
2003年エピック・レコード創立25周年記念イベントでくるくる回転する杏子さんを見て
気絶しそうなくらい嬉しかったわたし。スズナリの、しかもけっこうせり出してる
セットでナマ杏子さん。近! 歌うばかりか、あの声でボケるわつっこむわ戦うわ。
舞台上の役者さんと視線がぶつかって「あっ、今目が合った!!」とか、
スズナリの階段下で客出ししてる姿に「うわー本物だあぁぁ……」とか、
芝居でめったに味わわない感動の連続でした。だって杏子さんなんだもの。
永遠のイイ女だー。


音楽は、二胡を弾く女性に釘付けでした。
ドタドタドタッ! と役者さんが出入りしていた上手の出捌口に、
しずしずと現れて椅子に座って弾いていました。
奏者の女性がライトを浴びて二胡の音が響きはじめると、
そこはにわかにブルーノート。弓は白くて、たるんでいました。
そういう楽器なのかなと思って調べたら、なるほどなるほど。
弓には白と黒があって、前者は老馬の白い尻尾で作られているそうです。
音色の素晴らしさもさることながら、チャイナドレスから露になった
ふくらはぎのカーブが美しい!!!!! ……すみません。

窮地に追いやられた大帝が、パンダの被り物を手にしんみり話す
というマヌケなシーンでも、二胡が流れます。観客は、舞台上の
感動的ながらやけに可愛いビジュアルと、二胡の美しい調べを
ミックスして聞くわけですから、とても複雑な気持ちです。

演奏中、彼女は集中しているから台詞が聞こえてこないのかも
しれないけれど、あまりにも動じないで弾いてるので、
もしかしたら中国語圏のアジアンビューティー? と思ってました。
奏者はGANGA ZUMBAに参加している土屋玲子さんだと、後で知りました。
リキッドルームで見たあのバイオリン美女は、土屋さんだったのね!



敦×杏子プロデュース URASUJI・Ⅲ 寵愛-大陸編-
下北沢 ザ・スズナリ 2009年1/21(水)~2/1(日)
【作・演出】松村武(カムカムミニキーナ)
【出演】杏子 深沢敦 岩﨑大(Studio Life) 池田有希子
森貞文則 藤田記子(カムカムミニキーナ) 明星真由美
河野洋一郎(南河内万歳一座)倉科カナ ほか

二胡・バイオリン演奏 土屋玲子
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by toyorubichun | 2009-02-21 20:47 | 舞台
吉田兄弟「三味線だけの世界」

つくばにあるノバホールのコンサートに行ってきました。
1F680席、2F200席、バルコニー90席ぐらい。
すごく久しぶり、いいホールだったんだなあ。
これから来る演目も面白そうだし、都内とくらべて安いし、
近くにあるカピオとあわせてチェックしなくちゃだわ。

6列目ど真ん中、素晴らしい席で聴けました。
障子と行灯の和な舞台セットで、
タイトルどおり二人だけ、三味線だけのステージ90分。
楽しそうに、陶酔して津軽三味線をかき鳴らす兄弟!

映像が斬新で、年配の方は「目がチカチカする」と
戸惑ってらしたけど、こなれたトークに和んでました。
♪うさぎ追いし かの山~ の「ふるさと」は、
会場のあちこちから歌声があがってました。
9割がた埋まってる客席には、つくばセレブ的な
コンサート慣れした顔もあったけれど、
地元のおじちゃんおばちゃん、中高生がほとんど。
仕込んでも、あんなあったかい空気つくれないよなー。
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by toyorubichun | 2007-06-17 17:57 | 舞台
第15回ガーディアンガーデン演劇フェスティバルin吉祥寺シアター
公開二次審査会
2007年5月2日(水)14:00~18:30(←予定。実際は20:20頃まで)

【審査員】敬称略
坂口真人(演劇ぶっく社 代表)
渡辺えり子(女優、劇団宇宙堂 主宰)
河原雅彦(演出家、脚本家、俳優、HIGHLEG JESUS永久総代)
ウニタモミイチ(演劇エッセイスト) 
堤広志(編集者、演劇・舞踊ジャーナリスト)


GG公開2次審査会は入場無料。10組ぐらいの劇団が一気に見られます。見本市みたいに。応募してくる団体も、ストレートプレイ(会話ですすむ、ふつうのお芝居)に限らず、パフォーマンス、ダンス、アート系と多種多様。これって、小劇場に通っちゃってる人間にはすごくありがたい。チケット+ごはん+交通費×10公演て、けっこうな体力がいるでしょ。もちろん、たった10分のプレゼンテーションではその団体の魅力は見極められないんだけれども、彼らが与えられたチャンスをどう活かすか、質疑応答でどんな人柄のひとが作っているのかを、知ることができます。しかも! 審査員のバトルがめっぽう面白い。選出は、いつもモメます。その様子が真摯でナイス、一般客の自分が共感できたり、思いもよらない見方が提示されたり。一般客の投票はなくても、参加してる気持ちになって、エキサイティングです。

二次では、書類とビデオ審査を通過した団体から、さらに3つが絞られます。今回は、2008年のGWに吉祥寺シアターで公演を打てる権利を獲得できます。選ばれたのは、以下3つ。

■ユニット美人
■クリウィムバアニー
■東京デスロック

以下、今回出場した11組のプレゼン概要です。
ジャンル・みどころは私の主観です。参考までにどうぞ。

<開場13:30~開会14:00まで>
11組が二次審査を勝ち抜いたビデオを上映。二次では、時間にかぎりがあるため、音響・照明などのハード面を共有して使い、ほぼ素舞台でおこなわれます。ふだん凝った衣裳や装置、空間の使い方をしているカンパニーの場合、ビデオと二次プレゼンの印象がずいぶん違うことがあります。編集のしかた、撮り方、録画した映像のきれいさによっても、見栄えが変わってくるんだろうなあ。

1.冨士山アネット
映像×身体表現×台詞のパフォーマンス。
上手3分の1くらいのスペースに、男女のカップルがやって来て腰掛け、手を握る。どうやらそこは、喫茶店らしい。ウエイターが水差しを運んでくる。カップルが手を握りあっている真上から、ローション入りの、粘着質の水をそそぐ。スクリーンに、その手と手が生中継される。ここまでは無音。ふとスピーカーから台詞と、電子音のBGMが聞こえてくる。目を凝らすと、下手側後方の暗がりで、向かい合い、マイクを通してもう一組の男女がしゃべっている。女が一方的にキレている、痴話げんかだ。さらに舞台中央では、男女一組のダンサーが、エスカレートする喧嘩にシンクロして踊っている。奇声を発することも、しばしば。埒の明かない不毛な会話と、ぬるぬる濡れて絡まるエロい手と、間をおかず動きつづける身体の3セットが、同時進行していく。

2.東京デスロック
実験演劇。
横一列に立つ普段着の男女が、客席に向かって笑いころげる。台詞なし、目立った動きなし、だが何組かがくっついたり、離れたり、笑いでコミュニケーションをとっているようにも見える。突如、スクリーンにでかでかと「ロミオと………ジュリエット」のタイトルロールが流れだす。…の部分は、マキューシオ、キャピュレット家の人々などロミジュリの全キャスト名。あの笑いの渦は、じつは『ロミオとジュリエット』の全編をアレンジして演じていたんです、ってな仕掛け。

3.男肉 du Soleil(おにくドソレイユ)
踊れてない舞踏集団。
黒いスーツの男たちが踊って暴れる。その中で一人だけ、シルク・ド・ソレイユっぽい、ベルベット地のトレーニングウエアを着ている。彼の名前は「J」、いじめられっ子。白いフワフワしたフンドシを締めた男が、Jを励ます。男子校生たちは打ち解け、アニメとゲームが大好きで、女の子にモテなくて、JUNON BOYになんてなれやしない青春の影をシュプレヒコール。ビートルズの「Let it be」で舞踏らしく踊ってみたり、B'zのナンバー『Pleasure'91』を全力で歌ってみたり、痛々しくも甘酸っぱい若者の姿を描きだす。終始ステージ奥に突っ立っていた、海パン一丁の太った人が主宰。

4.小指値
電飾エンジニアのいる、芝居もできるクリエイター集団。
渋谷のハチ公を見ると、別れた彼氏を思い出してしまうので、ハチ公の銅像を捨ててやろうとする女。女のモノローグに合わせて、素足の男二人がパフォーマンスしている。バネのある、運動神経バツグンな動き。静かな雰囲気から一変して、X『紅』とともに水着ダンサーズが登場する。ストロボのような、オリジナル照明を使った動く影絵が映し出される。「10点10点10点!! お送りしましたのは、マーメイド小指値でしたー!」

5.company izuru
女流能×現代音楽。
女流能役者が板付きで姿勢を正している。男性パーカッションが演奏をはじめる。おもにシンバル、金属音がメインのノイズ音楽。女性チェロ奏者の音が加わる。パーカッションは、生で叩いた音をサンプリングさせている。スピーカーから鳴る音量が大きくなる。チェロ奏者が退場、しばらくパーカッションのソロ。身じろぎもしなかった女流能役者が、謡曲『融(とおる)』の謡と舞をはじめる。

6.CAVA(サバ)
パントマイム。
背の高さが大・中・小の男が3人、スーツ姿で登場。タンゴ調の洒落た音楽をバックに、台詞は一切なし。カルテなどの文具、ドアを小道具にしたパフォーマンスがはじまる。そこは、3人の働くオフィスらしい。流れるようなダンスとマイムで、職場から電話ボックス、自宅へと場面をつなぐ。後半は、サラリーマンと奥さん、奥さんと不倫している男のコメディ。

7.ブラジル
ドタバタ喜劇。
ストレートプレイのドタバタ喜劇。トランクス一丁の男が、女性のハンドバッグをひったくろうとしている。バッグには彼の財布が入っているらしい、彼がシャワーを浴びてるうちに、ラブホから女が抜け出したらしい、そもそも女が「ひと晩¥1万でいいわよ」と声を掛けてきたらしい……トランクス男の罵声から、徐々にシチュエーションが見えてくるが、彼が本当のことを言っているのかどうかは分からない。通りすがりのカップルが、女を気の毒に思って話を聞く。とくに女の子は親身になるあまり、買ってきた鍋の具を投げつけて、トランクス男を追い払おうとする。そこへトランクス男の友達も通りすがる。友達はトランクス男を「お前、まだそんなことやってんのかよ!」と叱る。トランクス男はストーカー犯罪の前科者なのだった。トランクス男は、どこまでも不利な立場に追いやられて……。

8.FUKAIPRODUCE 羽衣
ダンスレビュー。
暗転からスタート、メンバー9人が客席通路で、ひそひそ声の台詞をしゃべる。電気をつける、つけないで揉めてる男女のエッチな会話。それが終わるやいなや、ステージに突進し、昭和というか場末というかなレビューを展開する。女性陣がメッセージ性強そうな絶叫ラップをしてみたり、「羽衣のテーマ」♪脱いじゃおっかーな羽衣~♪をしっとり歌いあげたり。

9.ユニット美人
ブルマでパフォーマンス。
京都のいい歳をした女たちが、「モテたい」一心で、ブルマを穿いて歌って踊る。プレゼンは、緑色のブルマ2名がスポ根風に、GG演フェスにかける情熱をぶつけてきた。漫才並みに澱みのないかけあいがお見事。『エンタの神様』とか出たらブレイクするかんじの親しみやすさあり。「ブルマ、上げてこ!」クイッと股間を食い込ませるポーズが悩ましい。♪見返り美人に京美人 八方美人にハクビシン 美人の種類は数あれど ユニット美人はただひとつ ただひとつ ユニットー ユニットー ユニット美ー人ー♪

10.GiantGrammy
ウェルメイド・コメディ。
OLとサラリーマンが、ファミレスでお茶を飲んでいる。二人は昔つきあっていて、元カレのほうはOLに未練がある。だがOLは今、上司とつきあっている。上司は妻子持ちのくせにヤキモチ妬きで、OLが自分以外の男といる現場に張り込んだうえ、偶然をよそおってテーブルに割り込んできてしまう。えんえん男同士のバトルが繰り広げられるけれども、サラリーマンは役者をやっているただの男友達で、OLと仕組んで上司をからかっただけ、というオチが明かされる。

11.クリウィムバアニー
コンテンポラリーダンス。
見た目は乙女チック、顔は無表情、チュチュを纏った少女たちが、かぼちゃパンツも露にくるくる踊る。ノイズ音と歌謡曲、オレンジがかった淡い照明が白昼夢のような彩りをそえる。ロリータ男爵・丹野晶子が客演。お人形かバレリーナのような少女たちの中にひとり、ふくよかなメガネっ子・丹野が混じっている。甘くたおやかな世界で、メガネっ子のちょこまかした動きがアクセントに。
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by toyorubichun | 2007-05-06 18:40 | 舞台
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演劇集団キャラメルボックス2007スプリングツアー
『まつさをな』
脚本・演出 成井豊+真柴あずき
◆東京公演◆4月7日(土)~5月6日(日)
池袋サンシャイン劇場(文化会館4F)
〈全席指定・税込〉5,500円
福岡、神戸公演あり


一部、舞台の内容に触れています。 「観劇前に知りたくない!」という方はご注意ください。

主演は、温井麻耶さんという女優さん。
幕末のはじめ、まだペリーが来航してくるまえのお話です。

4/14(土)19時の回が終わり、カーテンコールで温井嬢は言いました。
それはもう、白い雲が浮かぶ青空のような笑顔で。

「明日はお休みをいただきまして、あさって月曜日
 から気持ちも新たに『まつさをな』、
 再開いたします……?……あーーーーー!!!!!」

「ちがうちがう!」
「休演日はあさってだよ!」
「もう一回!」
先輩方からすかさずチャチャ、いやフォローが入る。

彼女の頭上に“ガーン”て字が飛び出るのが見えました。
古典的なマンガみたいに動揺して、おでこにタテ線すら
見えた気がします。作ろうと思って作れるもんじゃない
そそっかしさ、愛らしさ。まつさをな顔を両手で覆い、
崩れ落ちる姿はまさに、千鶴(ヒロインの役名)でした。

「失礼いたしました、休演はあした。
 あさってまたお会いしましょう!!!」

今度こそカンペキっ! とばかりに福福しく
ホッペを赤らめる千鶴ちゃん、
もはや「しょーがねえか」って半笑いで
袖へ向かうキャストたち。
あんな手に汗握る美しい殺陣を観せてくれた後で、
全力で体当たりしてるのがビシビシ伝わって
くる演技の後で、素に戻ったときのミスにまで、
役の名残があるなんて。


こんな女優に恋をしないで、帰れますか。


東京ではGWまで、福岡、神戸もあるんですね。
さいごまで千鶴でいてください、温井さん。
と、つくばからお祈りしています。
キャラメルごぶさたの方、いつか観ようと思ってる方、
そして食わず嫌いでキャラメル避けてる方!
ぜひぜひ、観てください。

温井さんてインタビューや写真を見た印象のとおりだな、
と思ったのは登場シーン。旅芸人の勝ち気な女剣士
として現れますが、17歳の女の子って設定にしては
キモが座りすぎというか、やけに色っぽくもあり、
コムスメっていうよりキャリアウーマンの貫禄でした。

それから権力者の家の養女になり、必死でしゃなり
しゃなり振る舞ってみたり、人目をしのんで
剣の素振りをしてみたりと、出づっぱりでいるうちに、
どんどん千鶴ちゃんが魅力的になっていきました。

とはいえ、温井さんだけを観ていられなかった。
出づっぱりのヒロインは千鶴だけれども、それぞれの立場や
思惑が交錯する話なので、一人に絞って観られない。

身分ちがいのラブストーリーがメインと見せかけて、
いっきに重い人間ドラマへなだれ込む。
暗殺の黒幕は、実はあの人! という伏線はバッチリ、
このへんで派手なチャンバラ、ここでバーンと
カッコいい台詞、さ~、来た来たっ。

――先が読めても感動する。
読めるからなんだ。読めなければいい芝居なのか?
揚げ足取りをする気が失せる、一所懸命のなにが悪い、
こちらもしっかり観たくなるのだ。


人は生まれつき不公平である。
そんなことに苦しんできた男の台詞も、
あー、うー、分かる……とチクチク来ましたが、
そちらはダークサイドの真実。
ダースベイダーが帝国軍を率いて、
恐怖政治を敷くきっかけになるほうの真実。

「あなたは生きているんですから」

そう千鶴が、男に言います。
正しく生きなさい、強く生きなさい、人のために生きなさい、
などなど、まっとうな教えがつづきそうな言葉では
あるけれど、善悪に対してものすごくニュートラルな
響きをもって聞こえました。
過去がリセットされるわけではない、
あかるい未来が約束されるわけでもない。
真実ってきびしい。

いい台詞だな、と噛みしめる前に、
胸がきゅっと締めつけられました。
だって、なんかすごい必死に言うんだもん、千鶴ちゃん。
自分自身に言い聞かせてるんだとか、男にとっては
死んだ恋人と生き写しの女が叫ぶ台詞なんだとか、
これから明治までいっきに生死をかけた激戦が
行われようとしているんだとか、
頭でつなげてじーんと来る要素はじゅうぶんある上に、
あの声でしょう。音楽とか、踊りとか、味とか、香りとか、
感触とかと同じように、本能にガツンと来るものが、
このとき来たわけです。それまで可愛いなあ、
一所懸命だなあと思って見守っていた千鶴ちゃんに、
あんな声出されちゃって。やばかったです。

いい台詞を大声で言う舞台に感動している自分にびっくりでした。


自分で、キャラメルボックスが面白いと思える日は、来ない気がしていました。
あのーアレでしょ、アツい人たちのアツい演劇っていうの?
やけに早口で滑舌よくて、客席に向かって台詞言っちゃうの。
バタバタ走りっぱなしで、若者パワー全開(中年含む)で、
最後は泣けるピュアなストーリー☆でしょ。
うーん遠慮しとくわ~、と。

熱烈なファンがいる、というのも避けたい理油のひとつでした。
キャラメルに限ったことではないけど、固定ファンがあんまり熱いと、
芝居どうこうの前にドン引きしてしまいます。
中にまざってワーイってやっちゃえればいいけど、
劇場で酒飲んで騒ぐわけじゃないんで、自分のペースで観たいわけです。

キャラメルの良さは、なまあたたかいキャラメルファン独特
の空気が漂う客席や、テーマを高らかにうたい上げる芝居臭さ、
大仰な演技のクセに目をつぶって、
「キャラメルの世界で良しとされるもの」を受け容れる形
でしか理解できないものだと思っていました。

ファンじゃないと分からない世界、その世界に
どっぷり浸からなければ分からない良さなんだろうと。
たとえばキャラメルは、島だと思っていました。
島といってもデカいから、オーストラリア大陸ぐらい。

ええと……この先は、実際のオーストラリアじゃなくて、
あくまで比喩、架空の島として書きますね。自分は日本人。
ちっさい島国の住民。オーストラリアっていうところは、
住んでる人にはたいそう天国らしい。
行ったきり帰ってこないのは、だいたい日本に居場所が
なかった人たちだ。行ってみたけど、コアラもカンガルーも
たいして可愛くなかったよー、と退散してくる人もいる。
さまざまだけれども、まーわざわざ行かなくてもいいかな、
と思っている自分は、日本じゃ多数派である。

そしたら懸賞で、オーストラリア旅行が当たっちゃった。
行ってみたらよかった。
「え、いまさらオーストラリアなんか行くようになっちゃったの? くすっ」
そんなふうに言われても、自分だってそう思ってたんだから、
気にならない。日本に帰ってからは空を仰ぐたび、
空に国境はないんだなーと思う。空なんか見る習慣なかったから
気がつかなかったけど、世の中には鳥のほかにも空を
飛べる生き物がいて、コアラとイグアナが度突き漫才とか
やってる。カンガルーvsカラスで野球やってる。すげー。
ねえねえ、空見て、と隣にいた人をこづく。あ、すげー。
そのまた隣も空を見る。そのまた隣はヘソ曲がりで見ない、
ちらっと見てやっぱり興味わかない人もいる。いろいろだけど、
空すげーことになってるっていうのは、あっちこっちで広まっていく。


そうなったらいいなと思って、書いています。
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by toyorubichun | 2007-04-22 13:48 | 舞台
2006年2/9(木)~26(日) 初台・新国立劇場 小劇場
A席¥5,250  B席¥3,150
作:テネシー・ウィリアムズ 演出:イリーナ・ブルック 出演:木内みどり/中嶋朋子/石母田史朗/木場勝己

1930年代アメリカ、セントルイス。
南部でリッチな生活をしていた娘時代をひきずる母アマンダと、
ビジネススクールに通うのもままならない、社会性ゼロの姉ローラと、
工場で働き、家計を支える詩人の弟トム。
経済恐慌の煽りを受けて質素な暮らしをする家庭に、父の姿はない。セールスマンの父は妻と子を捨てて失踪してしまったのだ。ストーリーは息詰まるような生活から逃げ出したかったトムの回想で語られる。テネシー・ウィリアムズ自身の家庭をモデルとした自伝的作品だ。

母アマンダは、器量良しの娘ローラに過大な期待をかけている。こんなにきれいなんだもの、引く手あまたよね! と。しかしローラは婚期を逃しつつあるオールドミス予備軍のうえ、ガラスのコレクションにしか興味のない内気な女。弟トムは、うるさい母のリクエストに応えて友人の青年を夕食に招く。活力あふれる青年は、鬱屈した家庭に新鮮な空気をもたらす。しかも彼は、ローラがかつて学生時代ひそかに想いを寄せていた人なのだった。青年はやさしい言葉とキスでローラにひとときの夢を見せる。しかし――「僕は売約済みなんだ」。そう、イイ男がいつまでもフリーでいるわけがない。儚いロマンスはまさにガラス細工、そんなこともあったなと思い出すのは中年になったトム。うっとうしい家族に対する憤りと愛情は、胸に淀んで消えることがない。


『欲望という名の電車』と並んで、タイトルはよく耳にするし魅力的……と思いつつ観たことのない作品。やっとこさ観る機会がやってきました、テネシー・ウィリアムズ。繊細な心理劇って、ウーンて考えてるうちにうたた寝しちゃうんですが、今回は静けさも椅子の座り心地のよさもなんのその、うわあぁああっ、と肌のあわ立つような舞台でばっちり見届けました。

中嶋朋子さんが、足が不自由で情緒不安定な女性ローラを演じていたんですが、「傷つく演技」の完璧な形を観た気がします。夢のような一瞬に浮かれて、すぐそれがかき消えてしまうシーン。か細い肩をすくめて手回しレコードプレイヤーの前に佇む彼女に台詞はありません。恋した男と自分の弟が交わす会話は耳に入ってこない。彼女はただただ自分の闇に沈みこんで、ガラス細工の動物だけを遊び相手に妄想世界へ還っていく。その立ち姿はどう転んでも、世間知らずのオールドミスが落ち込んでるだけの様子にならないのです。誰に愛されることもなく朽ちていく美、その持ち腐れ感があますところなく表現されていました。

四方から眺めて完璧なプロポーションを確かめることのできるロダンの『接吻』(私が観てるのは上野の複製ですが)を鑑賞するときの気持ちと同じでした。『ガラスの動物園』は小ホールの下手、かなり後ろの席から観ましたが、おそらくどの距離や角度から観ても、中嶋さんの立ち姿はゾッとされられるものでしょう。

青年に束の間の夢をみせられてうっとりするとき、ちょっとしたダンスシーンがあります。青年と踊る社交ダンスもあるんですが、そちらではなく、中嶋さんソロの、ゆらゆらと上半身を漂わせるようなダンス。これが美しい。ミュージカルみたいにバリッと踊るよりも、ストレートプレイに突如挿入されるこういうタイプの身体表現はとても好きです。所在なさげにたどたどしく話していたローラの心が、開放されてふわふわ広がっていくかんじ。

余談です。舞台と彫刻に同じ美しさを感じることがよくあります。動いてるものと静止しているもの、生身と大理石という違いはあれど、空間を支配する美しさという点で共通しているので。と、急激に中嶋さんラブ! となった想いをぶつけてみました。公演期間終わっちゃいましたが、再演のあかつきにはお見逃しなく。
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by toyorubichun | 2006-02-28 00:40 | 舞台